garden





sakura garden



公園を歩いている。
金色の髪をした少女が公園を歩いている。
公園は夜である。
少女は真っ白なドレスを一枚着ている。
それは暖かな南風に靡いている。
レースが揺れている。
裾がひるがえっている。
金色の髪がサラサラと流れている。
サワサワと梢が鳴いている。
緩やかな風が梢を揺らすと、
少女の目の前に広がる闇は一度淡く白く瞬いて、
それから仄かな薄紅色に染まる。

桜の梢である。

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花びらは音もなく地面に落ちる。
散り敷かれた桜の花弁は、土の地面を薄紅の絨毯で覆い尽くそうとする。
少女はゆっくりとその中へ踏み出してゆく。
静かである。少女も始終無言である。
少女の無言は、息遣いを潜め、唇を固く咬んだ、かたくなな無言である。
瞳だけが舞い散る桜の眩しさに瞬きを繰り返している。
瞳だけがその度にきらりきらりと輝いている。
桜を浮かび上がらせているのは、一本だけポツンと残された街路灯である。
無機質に明るい人工光の中で、桜は風にそよぐ度に妖しく陰影を付ける。
白い花の裏には黒い枝が有り、淡く輝く花びらの隙間からは暗い闇が覗いている。
そのような薄明かりが、少女のしろい額と金の髪と、それから美しい瞳を照らし出す。

瞳の輝きは虹の光彩である。
少女が視線を巡らせる度に、きらり、きらり、と七色の光を放つ、美しい瞳である。


不意に少女は駆け出し、それに合わせたように風が強くなる。風は向かい風である。風はぶわッ・・と花びらを舞い上げ、それは少女に襲いかかるように正面から吹付ける。仄かに紅い色をした無数の小さな欠片が、少女の顔に、身体に、小さな生き物の群れの様に纏い付く。
少女は顔に張り付く花びらを払いながら走る。彼女が首を振り花びらを払い落とす度に、金色の髪と七色の瞳はきらりきらりと揺れる。
少女は走り続けている。少女は夢中で走り続けている。桜色の絨毯を踏み付け時には地に落ちた花びらを躙りながら、少女は無我夢中で走っている。
少女は裸足である。小さなしろい足に、踏み躙られて汚れた花びらが張り付く。土で黒く汚れる。そのうち石も踏むだろう。傷も出来るだろう。
けれど走っている。


少女は走っている。どこまでもどこまでも終わりない薄紅の吹雪の中を走っている。
まるで何かを追うように。まるで何かに追われるように。
例えば誰かを探すように。例えば誰からか逃れるように。




何時の間にか雲が途切れている。
街路灯の光はもうどこかへ行ってしまっているけれど、
少女は、何故街灯もないのにこんなに明るいのかしらとも思わない。
走るのに夢中の少女は気付かない。


それを月が見ている。




その世界が夢かどうかは少女には分からない。
走っている少女に分からないのだから、他の誰にも分からないのである。













椿もいいですが、やはりり桜は大好きなのです。中国の人には「花と言えば牡丹」が常識らしいですが、日本なら桜でしょう。
outernetが発売になったのが丁度三月の末で、近所の公園にウォークマンだけ持って夜桜を見に行ったりしていた頃に思いついたのが、このシーンです。
garden、大好きな曲です。ケイコとマークの囁くボーカルが、すごくミステリアス。
この曲、最初はゆっくりと、息を潜めるように静かに歩き回っていた筈なのに、いつの間にかだんだんと不安に駆られていって、最後には夢中で走り出している・・・という動きのイメージがあるんですよ。何となく。
「少女」は、outernetのジャケの、あの子です。虹色の瞳の金髪のコです。

・・・・それにしても、読みにくくて済みません。

こちらの壁紙も、ぐらん・ふくや・かふぇさんより頂きました。
夜桜のお写真は、Play Moonさんより(残念ながら閉鎖されたようです)。