私の好きなglobeの歌。FACES PLACES


 こんな歌って、アリなのか。この曲を初めてきいた時、私の印象はこうだった。
 テレビの歌番組をたまたまつけたら、知らない三人の男女が映っている。globe。あぁ、そういえばそんな名前もきいたことがあるような気もする。そうだ、こないだ紅白で、「踊る君を見て…」とかいう歌を歌っていたグループだ。あれは結構良かったな…当時の私はglobeをそんな程度にしか認識していなかった筈なのに、それなのに、司会者と笑いながら話す三人を見ながら、何故かチャンネルを変えないままでいた。
 それを、今となっては運命だったと、私は信じている。
 「それでは、globeの皆さんで、FACES PLACES」
 知らない曲名が出てきたので、私は、あれ、と思いながら画面に目をやった。
 そうしたら最後、もう目が離せなくなっていた。
 なんだこの歌は。そう思った。ききながら、見ながら、鳥肌が立つのを感じた。なんなんだこの歌は。こんな歌はアリなのか。私は画面に釘付けにさせられながら、頭を混乱させながら、しきりにそう繰り返した。こんな苦しい歌なんて、こんなに切ない歌なんてアリなのか。こんな痛々しい歌詞を、こんなに攻撃的な音を、こんなに耳を切り裂くような声で、テレビで堂々と歌っていいものなのか。
 食事をしながら、家族で楽しく喋りながら、ほんの暇つぶしに、たまたまチャンネルを合わせただけ…そんな理由でテレビをつけて、私と同じように何の心構えもなくこの曲に出会ってしまった人たちは、一体どうしたらいいのだろう。一瞬でぬるくて温かい日常から放り出されて、私と同じように一瞬で画面に釘付けにされたまま、どうしようもなくその場から動けなくなってしまったに違いない。
 逃げられない。目を逸らせない。耳を塞ぐ事すら許してくれない。
 逃げるな!と彼女が叫ぶのだ。目を逸らすな!耳を塞ぐな!見て、きけ。この私の歌を、逃げずに、きけ。画面の中から噛み付くように叫び、吼える、小さなボーカリストのこの気迫は何だ。
 さ迷うような虚ろなため息と低い低い囁きの裏に隠された、行き場のない怒りのような静かな狂気は何だ。
 淡々と乾いたデジタルな音、人の鼓動のような静かなリズム、それを容赦なく切り裂くギターの唸りはどうだ。
 あぁ、こんな歌が、アリなのか。こんな、痛い、哀しい、切ない、辛い、マイナスの感情をこんなに、怖いくらいに曝け出して歌う曲があっていいのか。怒り、憤り、苦しさ、悔しさ、そんなネガティブな気持ちをここまでブチ撒けてしまって、このボーカリストは、大丈夫なのだろうか。こんな身体の小さな、若い女の子が、こんなにギリギリの声を振り絞って、こんなに過激な歌を歌って、そこまでして彼女は何を伝えたいんだろうか。
 そう思いながら、曲が終わるまで息も止めるようにして画面に見入っていた。ほんの5分ほどの演奏時間が、私には恐ろしく長く感じられた。その5分の間に金髪の彼女の全てを知れたような気になるくらい、そのくらい強烈に彼女の歌は私を魅了し、そのくらい鮮烈に、彼女の存在は私を揺さぶった。
 ようやく歌い終わると、金色の髪のボーカリストは、また普通の可愛らしい女の子に戻った。こちらを見て笑う大きな瞳の下にスパンコールがキラリと光って、泣いているようにも見える彼女の笑顔は、今すぐ抱きしめてしまいたいほどにいとおしく思えた。
 …そこまで見届けて、私はようやく息をつくことができた。
 これは物凄い経験だ。背筋がゾクゾクするのを感じながら、私は、自分が凄まじいものに出会ってしまったのだと分かった。あぁ、きっと、私は何かを変えるな、と漠然と思った。何かとは、多分、姿勢だろうとも思った。毎日を生きていくための姿勢を、多分、あの金髪の、名前も知らない女の子に変えさせられたんだな、と、耳に残った彼女の声の残響を味わいながら思った。
 その時から、私はglobeというグループに興味を持ち始めた。いやそれは嘘だ…その時既に、私はglobeのファンになっていた。はるかな天までつらぬくようなKeikoの絶叫に、暗い地の底でもがくようなMarcのため息に、その全てを束ねて統べるTKの音に、たった五分で完全に魅了されてしまっていた。
 その時から今までずっと、since 1997/03/07 PM9:00、私は今でもglobeに恋し続けている。

2002/04/02
2002/07/25 改稿



マイ・ファーストコンタクト・オブ・globe。私のglobeはじめて物語。
ちょっと誇張はしてありますがが(笑)、本当にこんな感じでした。まさにSHOCK INSIDE MY BRAIN. 脳天直撃セガサターン。
こんな「歌」ってあっていいのか。歌っていうのは、楽しくなければいけない、明るく元気でなければならない。なぜだかそんな風に信じ込んでいた私にとって、この歌との出会いは、まさにコペルニクス的転換でした。

きいて苦しくなる歌もアリなんだ。見ていて、どうしようもなく胸が痛くなってしまう歌もアリなんだ。そう教えてくれたのが、この歌でした。

鳥肌が立つくらいに感動した。感動すると同時に、当時はまだ名前も知らなかったケイコが、ひどくいとおしく思えてたまらなくなった。どうしようもなく、ケイコに惚れてしまっていた。
あんなに真摯に叫ぶ人を、死ぬほどの強さで何かを求めようとする人を、見たことがなかった・・・・
あのショックは今でも忘れない。
そしてそこから、今に至るまでの私のglobeファン生活が始まったのです。

だから、この歌は、私の中で物凄く特別な歌なのです。
私の人生のBGM。このとき以来、この歌を知ってからの私の人生は、いつでも常にこの歌と共にありました。
丁度高校受験から進学にかけての時期でした。そのころの女の子にありがちな、形のない苛立ちのようなものをずっと抱えていた私は、まるでどこかにその答えが吹き込まれてでもいるかのように、この歌を繰り返し繰り返しききました。友達にダビングしてもらったテープのA面にこの歌を、B面に、やはり同じくらい好きになったanytime smokin' cigaretteを入れて、繰り返し繰り返しききました。テープが伸びるほどききました。音が劣化してもきき続けました。
高校に入ってから、友人にFACES PLACESのアルバムを借りて、同じようにテープに録音して、毎日いつでもきいていました。
正直な話、私の高校生活は、あまり明るいものではありませんでした。毎朝毎夕の退屈な通学時間に、友達のいない一人の昼食時間に、ちっとも上達せずに追い抜かれていくばかりの部活が終わった後に、両親と衝突して部屋に閉じこもったときに、狂ったように同じアルバムを、同じ曲ばかりをきき続けました。
鬱屈した受験生時代、浪人時代。「キレる」ことも逃げ出すこともできず、ただ諾々と周囲に従う日々を送り続けた私の代わりに、テープの中のケイコは存分に泣き叫び、吼え狂い、噛み付いたりして、私の心に溜まる澱を、強引にかっさらっていってくれました。高三の春、バレー部が県大会に行けずに終わってしまったときも。夏、成績がボロボロになっていったときも。冬、受けた大学全てから、不合格通知しかもらえなかったときも、成績が下がることと、怒鳴る父とに怯え続けた浪人時代も、そして二度目の冬、受験会場に向かう電車の中でも、私はこの歌をきいていました。

そして今もきいています。ぬるくて楽な生活に埋もれてしまわないように。あのころどれだけ自分がギリギリだったかを、思い出させるために。
ケイコの必死の表情に胸を突かれ、私はこの人のようになりたいんだと泣いた、若さゆえかもしれない真摯さと敏感さが、いつまでも自分の中から消えていかないように。

私は今、ギリギリで生きているか。
あのとき見たケイコと同じくらい、死ぬ気で何か求めているか。
いつでもbest of my lifeで生きているか。
・・・そう自分に問いつめながら、私は今日もこの歌をきいています。

Relationのパンフに、ファンが書いたglobeの曲の感想文集が載っていて、当時それをとても興味深く読みました。それぞれのglobeとの出会い、それぞれのglobe観、それぞれの思い入れ。それぞれの解釈。それを知ることは、とても楽しかった。読んでいて、とても幸せな気持ちでした。
・・・実は、その感想文集の中に、FACES PLACESをたった一言、
「天を突き抜ける叫び」
と評した方がいらっしゃったのです。
その言葉がとても印象に残りました。私がこの曲をきいたときに感じた思いは、まさに天を裂いて落ちてきた稲妻に打たれたような感覚だったからです。
あなたは冬の稲妻((c)アリス)。

とにかく、その言葉にハッとしたのです。見事にこの歌を表しているな、と思ったので、少し表現を変えて、結びに書いてみました。
天をつらぬく叫び、天地をつらぬき通す叫び。
そう、そんな感じです。この歌は。

ちなみに、この文章は、今年の春のhouse of globeの特別企画・ツアーカテゴリーオールジャンル・ファンミーティングに参加するために投稿したエッセイをを改稿したものです。投稿テーマが、「あなたの好きなglobeの曲」だったんですよ。だから、凄まじく肩に力が入っている上に、文章がメチャ硬いです(笑)。
でも、自分とglobeとの運命の出会い(笑)をしっかりと思い出すことができたので、書いてよかったなと思いました。
で、肝心のファンミーティング参加審査には合格したのかどうか。・・・それは、実は言えないのです(笑)。合否・参加内容も含めて、FCからの厳しい緘口令が、今でもしかれ続けているらしいので。
実際に、「ミーティングに参加します!」とファンサイトのBBSに書き込んだら、「参加辞退してください」って電話がきた・・・という噂もあるんで。やっぱり、本人たちと会うとなると、色々と厳重にしないといかんのでしょうね。

・・・最後には何を言いたかったんだか分かんない展開になってしまいましたが。私の「globeはじめて物語」はこんな感じでした。
これを読んでくださっているあなた。あなたのglobeはじめて物語もききたいな、よかったらおしえてください。